2021年の冬ごろに、「ほめてちゃん」という SNS を作ったのですが、利用者がほぼ居なくなったこと、Twitter API の有料化によって使いづらくなったこと、引っ越しによって回線の事情が変わり自宅サーバーが運用できなくなったこと……と、踏んだり蹴ったりな状態だったので、公開を停止し、コードを GitHub に公開しました。
なにかの参考になるかも……というレベルのものではなく、とてもお粗末です。ただ、思い入れはあるので、技術というより、作った経緯と、SNS を運用するということについて話したいと思います。
経緯
自分の前職は組み込みエンジニアだったのですが、もとから関心は Web にありました。元々趣味でちょっとした Web サービスを作っていたからです。もちろん、学生の身分だったので、お金はかけられず、非常に小規模なものです。
新卒で入った会社で、組み込みエンジニアとして働き始めましたが、そこには業務を効率化するために社内 Web サービスを作っているチームがいました。
正確には、昔いたのですが、ほとんどメンバーが居なくなり、メンテナンスされてない Web サービスだけが残ったという経緯です。そこで、Webサービスに興味がある自分がそれを引き継ぐことになりました。
社内 Web サービスは Ruby on Rails で作られており、Ruby on Rails のことはさっぱりわからなかったのですが、見様見真似でコードを修正することくらいはなんとか出来ました。
それから、自分は Web サービス担当という立ち位置になったので、Ruby on Rails をちゃんと勉強し、いくつかの 社内 Web サービスを自分で提案して立ち上げるまでになりました。
そして色々あって転職することになった時に、今度は Web 系がいいなと思ったのですが、これまで作ってきた社内 Web サービスは規模も小さく、あまりに転職活動でアピールする実績としては乏しい。そこで、実績づくりも兼ねて、Webサービスを趣味で作ってみることにしました。それが「ほめてちゃん」です。
前職で Web サービス担当と言っても、誰もレビューしてくれない、誰も手本を見せてくれない中での開発ですから、十分なスキルは身についていませんでした。「ほめてちゃん」の開発はとても苦労しましたし、利用者の方にアドバイスをいただくことも多かったです。
理念
「ほめてちゃん」は、このような SNS でした。
もちろん、完全に転職用に作ったわけではなく、理念はありました。
私はクソリプがとっても苦手です。別に悪意がないクソリプでも、「なぜこんなことを送ってくる?何を考えているんだ?」という気持ちになって落ち込んでしまいます。
もちろん、イラストにポジティブな感想コメントをつけてもらえるのはとても嬉しいことです。が、それ以上に、自分はリプライの機能がストレスであると感じてしまいました。
諍いの火種になりやすい「リツイート」すら良くない。極論、「いいね」だけが見えればいいのではないかと。
また、Slack の絵文字のように、色々なリアクションをつけることができる機能は便利ですが、ネガティブな絵文字をつけられたら悩んでしまうかもしれない。
そんなことを考えた結果、「ほめてもらいたいこと」を書いて、読んだ人は「ほめる」ボタンを押してほめる。それしかできない SNS のアイディアが誕生しました。
おすすめタブ
「ほめてちゃん」には「リツイート」が無いので、フォローしてない人の投稿を知ることができません。
そのため、「たくさんほめている人の投稿が他の人の TL に出てくる」というような仕様にしました。ほめればほめるほど人にほめてもらえるということです。
自分で作っておいてアレですが、「ほめる」の数字が増えていくのは、不思議と、ちゃんと嬉しいのです。機械的に押しているだけの人が大半だとしても、です。これには数字の魔力を感じました。
ここまで書いていてお気づきの方もいらっしゃると思うのですが、この自分が考えた仕様は Twitter で非難轟々の「イーロン君のおすすめタブ」と似たようなものです。
「SNS を作る人は、なぜ知らんやつをフォローさせようとしてくるんだ?」と思うかもしれません。自分も SNS を作っていなかったら、そう思っていたと思います。
SNS を作る人は、SNS を発展させるため、いかに投稿を FF 外の人の目に触れさせるか、を考えたくなるのです。
運用
自分のアイデアは、「ほめてちゃん」が「ただほめてほしいだけの不快じゃない投稿」だけに溢れていればイーロン君のおすすめタブとは違う未来を歩んでいたかもしれません。
しかし残念ながら、コンセプトに沿わない、他人に攻撃的な書き込みをするユーザーが現れました。リプライの機能などもないので、やんわり指摘することもできません。
その時点である程度、Twitter で「ほめてちゃん」は拡散されていましたが、正直、「このサービスはダメだな」と思いました。
性善説で成り立っているサービスは現代のインターネットには存在できないのです。
初動で多少拡散されてユーザーが増えた後、少しずつユーザーが減っていきました。それはあまりにゆるやかで、自然で、悲しさやさみしさはありませんでした。
しかし、これを作ったことで Web 業界への転職にも成功することができたことが大きく、役割を果たしてくれてありがとう、という気持ちにもなりました。
おわりに
今だから言えることですが、このサービスは AWS の無料期間で使えるものだけで動いていました。なので元々長期的に運用するつもりはあまりありませんでした。
無料期間が過ぎた後は、自作サーバーで動かしていたので、トータルでほぼ0円です。もし何か間違ってバズっていたらサーバーはパンクしていたでしょう。
実は転職のためだったよ、とか言うと、ちょっと騙し討ちみたいで申し訳ないですが、自分にとってはいいアイデアだと思ったし、思い入れのある SNS です。
いつか技術一本でもっと稼げるようになったら、今度こそ、もっと機能やインフラを充実させ、理想の「ほめてちゃん」を作る日が来るかもしれません。
それでは。