野球の格言として、「弱いチームは大差で勝ち、僅差で負ける」(もしくは「強いチームは大差で負け、僅差で勝つ」)というものがあります。
負ける時は何点取ろうと負けだし、勝つ時は1点でも上回っていれば勝ちだからです。
同じ得点しか取れないなら、大差で負け、僅差で勝った方が勝ち数が増えるので、その方が試合巧者ということになります。
ですが、このルールは本当に当てはまるのでしょうか?普通に考えれば、少しおかしいことがわかります。
本当に極端に強いチームがいたとしたら、大差勝ちを連発するに違いないからです。この格言はリーグの戦力が拮抗している時に成り立つものなのではないかと考えられます。
また、「僅差の試合の勝率が高いチームは、中継ぎが優秀なチームである」という意見もよくみられます。
セイバーメトリクスでは、中継ぎと先発の失点は同じように扱われますが、この意見の通りであれば、勝ちパターンの投手の貢献度はデータ以上に高いことになるでしょう。
これらはすべて感覚的な話なので、今年のNPBのデータを使って調べてみました(2023/6/6現在)。
不要得点率
あるチームが、3-1で勝ったとします。この場合、2-1でも勝てたということになるので、1点は「取らなくても勝てた点」ということになります。こういった、「取らなくても勝てた点」の割合を調べてみました。
合計得点からの割合で考えると、勝率が高いチームが高くなるのが当然なので、「勝った試合の得点」を分母として計算して、「不要得点率」を出してみます(ネーミングは適当です)。
セ・リーグ
まず、セ・リーグを見てみると、DeNAが一番無駄な得点を取っていることになります。阪神も高いです。
しかし、この2チームの順位は1、2位ですから、「無駄な得点を取っているチームは弱い」という法則にはあてはまらないようです。
ただ、5位の中日が不要得点率3位なので、やや効率の悪い試合をしている様子はうかがえます。
パ・リーグ
パ・リーグも、同じく順位との相関があまりありません。1位のオリックスがダントツです。
セ・リーグの中日と同じく、日本ハムは効率の悪い戦い方をしている傾向にあるようです。
無駄な点の割合
これは完全に蛇足ですが、「負けた試合の得点はすべて無意味」と考え、「無駄な点の割合」も出してみました。
大差で負けてもこの数値はそこまで増えないので、僅差負けの頻度を測るヒントになるのではないかと考えました。
セ・リーグ
ほぼ順位順です。これは、単純に負け試合が多くなると高い数字が出やすくなるので、当然です。
とはいえ、2位のDeNAが比較的高い数字を出しているので、「僅差負けが多い」という傾向があるように読み取れます。
パ・リーグ
これもほぼ順位順で、コメントするべきところはありません。
まとめ
「弱いチームは大差で勝ち、僅差で負ける」という格言は、今のところあまり当てはまっているとは言えないと思いました。
とはいえ、データを見てみると、順位に対して効率の悪い戦い方になってしまっているチームを見つけることはできます。
これが冒頭で述べたように中継ぎの成績によるものなのかはわかりませんが、もう少し関係しそうなデータを集めてみると、相関が見えてくるかもしれません。